議事録が死蔵される課題に直面していませんか?
チームを率いる中で、こんな状況に遭遇したことはありませんか?
週に何本も会議をこなし、議事録もしっかり取っている。でも、後から「あの件、どう決まったんだっけ?」と探すと見つからない。結局、同じ議論を繰り返してしまう。
実務でこんな場面がありました。あるプロジェクトで3ヶ月前に議論した設計方針について、新しいメンバーから質問を受けました。議事録を探しても埋もれていて見つからず、結局記憶を頼りに説明することに。「あのとき、ちゃんと記録したはずなのに…」
マネージャーとして、この課題は看過できません。議事録が活用されないということは、チームの知見が蓄積されず、意思決定のプロセスも不透明になるということです。
AIで議事録をナレッジベースに変える
この課題に対する解決策が、AIを活用した議事録のナレッジ化です。
具体的には以下の手順で進めます:
- 議事録をAIで要約・構造化
- 決定事項とアクションを自動抽出
- タグ付けして検索可能なナレッジベースに
これにより、「あの決定事項、どこだっけ?」という問いに数秒で答えられる環境が構築できます。
具体的な実装方法
NotionAIでの議事録要約・構造化
議事録の作成方法に応じて、2つのパターンがあります。
パターン1:既存議事録をAIで要約
手書きやテキスト化済みの議事録を後から構造化する場合:
- 議事録のテキストを選択
- 「AIに依頼」→「要約」を選択
- 生成された要約を確認・調整
より実用的な構造化プロンプト:
この議事録から以下を抽出してください:
- 決定事項(3つまで)
- アクションアイテム(担当者と期限)
- 議論の論点
- 次回までの宿題
パターン2:AIミーティングノートで自動生成
会議中にリアルタイムで議事録を生成する場合:
- 会議ページで「議事録を取る」ボタンをクリック
- 音声録音を開始
- 会議終了後、自動で文字起こしと要約が生成される
- 生成された内容を確認・追記
AIミーティングノートのメリット
- 議事録作成の手間がゼロ
- 会議に集中できる
- 音声データも保存され、後から確認可能
- 決定事項とアクションが自動抽出される
どちらのパターンも、後から検索しやすい形式で情報が整理されます
定期的なナレッジ抽出
週次・月次でAIに以下を依頼します:
- 「今週の決定事項を抽出して」
- 「プロジェクトXに関する議論を時系列でまとめて」
データベース設計のポイント
議事録を蓄積するデータベースは以下の構成が推奨です:
| プロパティ名 | プロパティ種類 | 用途 |
|---|---|---|
| 会議名 | タイトル | 議事録のタイトル |
| 日付 | 日付 | 会議実施日 |
| 参加者 | ユーザー | 参加メンバーを選択 |
| プロジェクト | セレクト | 所属プロジェクト(単一選択) |
| ステータス | ステータス | 未レビュー/レビュー済み/ナレッジ化済み |
| 決定事項要約 | テキスト | AIが抽出した決定事項 |
| アクション | リレーション | タスクDBと連携 |
| タグ | マルチセレクト | トピック分類(複数選択可) |
このDB構造により、「プロジェクトXの決定事項」や「先月の重要な議論」といった検索が可能になります
管理者視点での価値
チーム横断での知見共有
複数チームを持つ場合、各チームの議事録から横断的な知見を抽出できます。
具体例:プロジェクト間のナレッジ共有
プロジェクトAで「APIレスポンス速度改善」の議論があった場合:
- タグ検索で「API」「パフォーマンス」を抽出
- プロジェクトB、Cでも同様の課題があったことを発見
- AIに「プロジェクトA、B、CのAPIパフォーマンス議論をまとめて」と依頼
- 共通ベストプラクティスを横展開
これにより、各チームが個別に試行错誤するコストを削減できます。
決定プロセスの透明化
「なぜそう決まったのか」の経緯が追えるため、後任への引継ぎもスムーズです。
具体例:引継ぎ時の活用
リーダー交代や新メンバーのオンボーディング時に:
- 「プロジェクトXの主要決定を時系列でまとめて」とAIに依頼
- 生成されたタイムラインを確認
- 各決定の背景と議論内容を元の議事録で確認
- 引継ぎ資料として活用
効果
- 引継ぎ時間が50%短縮(約4週間→2週間)
- 「なぜこの仕様?」という質問にすぐに答えられる
- 意思決定の背景も伝わり、同じ議論の繰り返しを防げる
リスク管理と監査対応
セキュリティやコンプライアンスの観点からも有効です。
具体例:監査対応
「個人情報の取り扱いについて、いつどのように決定したか」を追跡可能に。
- タグで「セキュリティ」「個人情報」を設定
- 関連会議を一括検索
- 決定プロセスと参加者を提示できる
実践:導入の3ステップ
実際に試してみた結果、以下のステップで進めるのが効果的でした。
Step1:DBを作成して1会議で試す(1週間)
最初からDB化することで、「検索できる」価値を即実感できます。
- 議事録DBを作成(シンプルな構成でOK)
- 必須:会議名、日付、決定事項要約
- オプション:参加者、プロジェクト、タグ
- 週次定例1回分の議事録をAI要約してDBに登録
- AIミーティングノートを使う場合:音声録音で議事録が自動生成されるため、要約の手間が省けます。生成された内容を確認するだけでOK。
- チームから「探しやすい」というフィードバック収集
Step2:本格運用と蓄積(2〜4週間)
効果が実感できたら、全体に展開します(私の場合は、部署内で展開しました)。
- 全定例会議にAI議事録を展開
- AIミーティングノートを使う場合:会議中に音声録音を開始するだけで、議事録の本文が自動生成されます。ただしプロパティ(タグ、ステータスなど)は別途設定が必要です。
- 過去1ヶ月分の議事録を投入(可能な範囲で)
- プロパティとタグルールを洗練
- 例:タグに「アーキテクチャ」「セキュリティ」「API」を追加
プロパティ設定の効率化
プロパティの設定をAIが支援できます。
- 方法1:AI自動入力(テキストプロパティのみ)
- データベース設定で「AI自動入力」を有効化
- 利用例:「決定事項要約」プロパティで要約を自動生成
- 制限:テキストプロパティのみ対応
- 方法2:Notion AIに直接依頼(すべてのプロパティタイプ)
- Notion AIに会話で依頼すれば、タグ、ステータス、セレクトなどを一括設定
- 例:「この議事録ページに、内容から適切なタグを3つ追加して」
- 利用例:複数ページのプロパティを一括更新、新規ページ作成時に自動設定
- 制限:なし(すべてのプロパティタイプに対応)
Step3:ナレッジ抽出を定例化(1ヶ月〜)
蓄積された議事録から、横断的なナレッジを抽出します。
月次ナレッジ抽出の実践例
毎月末に15分かけて、以下を実施:
- 議事録DBを開き、今月分をフィルター
- Notion AIに依頼:
このデータベースの今月分議事録から、以下を抽出してまとめて: 1. 重要決定事項(5つまで) 2. プロジェクトごとのトピック一覧 3. 次月に持ち越す課題 - 生成された内容を「月次レポート」ページに保存
- チーム共有会で報告
四半期振り返りの実践例
四半期末に30分かけて、以下を実施:
- 議事録DBを開き、今四半期分をフィルター
- Notion AIに依頼:
このQ2の議事録から、以下を時系列でまとめて: 1. プロジェクトXの主要マイルストーン 2. 技術的意思決定の背景 3. チームで学んだこと - 生成された内容を「Q2振り返り」ページに保存
- 経営層や他部門への報告資料として活用
具体的な成果例
実際にこの運用で得られた成果:
- 「先月、API設計でどんな議論をした?」→ 5秒で回答
- 「セキュリティの決定経緯を知りたい」→ 議事録を時系列で提示
- 新メンバーのオンボーディングが2週間短縮
他チームへの展開
効果が実証されたら、他チームにも展開します。
運用定着のコツ
1. 負荷をかけすぎない
最初から完璧を目指す必要はありません。
- 最初の1ヶ月:要約だけをAIで生成(AIミーティングノートを使う場合はさらに楽)
- 2ヶ月目:タグ付けを開始
- 3ヶ月目:月次レポートを開始
段階的に機能を追加することで、チームの負荷を抑えつつ習慣化できます。
補足:AIミーティングノートを使う際の注意点
AIミーティングノートで議事録の本文は自動生成されますが、以下は別途対応が必要です:
- プロパティ設定:タグ、ステータス、プロジェクトなどは手動またはNotion AIに依頼して設定
- 内容の確認・追記:自動生成された内容に不足があれば補足
- 決定事項の確認:AIが抽出した決定事項が正確かチェック
2. テンプレート化で効率化
よく使うプロンプトをテンプレート化します。
実践例:議事録テンプレートにプロンプト集を配置
議事録テンプレートの最後に、トグルでプロンプト集を配置します。
▶ AIプロンプト集(コピーして使ってください)
基本要約
この議事録から決定事項、3つまで抽出して
アクション抽出
アクションアイテムを担当者と期限付きでリスト化して
月次まとめ
今月の重要決定事項を5つまとめて
プロジェクト検索
プロジェクトXの議論を時系列でまとめて
メリット
- 議事録を書きながら、すぐにプロンプトをコピーできる
- トグルで畳んでおけるので邪魔にならない
- チーム全員が同じプロンプトを使える
3. 小さな成功体験を可視化
効果を数値で示すことで、チームのモチベーションを維持します。
測定する指標例
- 検索時間:「あの件、どこだっけ?」が10分→5秒に短縮
- 同じ議論の繰り返し:月で3回→0回に減少
- 新メンバーオンボーディング:4週間→2週間に短縮
実践例:週次ミーティングで共有
週次ミーティングで3分間、以下を共有:
- 「今週、議事録からすぐに見つかった事例:3件」
- 「過去の決定を参照して同じ議論を回避した事例:1件」
具体的な成果を共有することで、「確かに効果がある」と実感させます。
まとめ
議事録のAI活用は、技術マネージャーにとって強力な武器になります。
最も重要なのは、「小さく始める」ことです。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは1つの会議でAI要約を試し、効果を実感してから、少しずつ機能を追加していく。それが、チームに定着させるコツです。
- 次の定例会議の議事録をNotionで作成し、AIで要約する
- 要約をページに残し、「決定事項」を見出しで整理する
- 1週間後、Notion内で検索して「先週何を決めた?」にすぐ答えられることを実感
これで効果を体感できたら、Step1のDB化を検討してください。
小さく始めて、チームに合った形に育てていってください。
明日の会議から、ぜひ試してみてください!
